2012年 06月 03日 ( 1 )

般若曼荼羅

     般若曼荼羅   能面雑話(20)

此の般若面は、能に使う所謂「能面」として作られた物ではないように思はれる。
しかし、造形的に、般若の特徴が良く出ていて、それなりに迫力もあり、面白いものである。
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桐材で作られたもので、角も一体造形で彫り出され、直線的で鋭く天を突いている。角の片方の先端
は漆で補修した跡が見られる。また彩色に胡粉が使われた形跡は無く、全体に黒いのは、長年に渡る
囲炉裏の煤によるものか、あるいは漆が掛けらていたのかもしれない。また、目や歯には当初から、
金具は嵌められていなかったのではないかと思われる。

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正面から見ると、口の形は左右が非対称で、左側は中心から口角までが幅狭く、右側は横に開いて
口角までが幅広くなっている。
左の口角の動きに伴い、下あごは中心が左にずれて、歯並びも上あごの歯とは正対していない。
これは口の動きの変化を正確に捉えており、見事な造形と言う外ない。


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正面だけでなく、真横から見ると、左右の口の形の違いが、更に良く分かる。
向かって左側の口は、口角が尖り全体の形も鋭角で鋭く、怒りを顕わにしているような造形である。
向かって右側の口は、口角は尖らず、全体の形も丸く、少し穏やかな雰囲気が感じられる造形である。

これは般若の能面に共通した特徴で、意図的に左右の造形を変えていると言われている。
一般的に言われているのは、般若の面が橋懸りを左から右へ舞台に進む時は、怒りを顕わにした左側
の顔を見せて現れ、舞台でも怒りや威嚇を示す時は、左側の怖い顔をみせるが、やがてに折伏されて
少し穏やかな顔の右側を見せながら橋懸りを戻っていくのだと。

般若面の造形の妙は、ただただ感嘆するばかり、改めてこれを創作した先人に畏敬の念を覚えるの
である。

by kame0401 | 2012-06-03 12:46 | 能面雑話 | Comments(0)