2012年 06月 19日
カイラスの旅(2)
この本を大阪の古本屋で見つけたのは、何時頃だったか思い出せないが、この本との出会い・特にカイラスの旅の記述とカイラスの白黒写真が、私の夢を大きく膨らませたのは確かである。
1932年に出版されたこの本、1932年と言えば私の生れた年である。何か因縁めいたものを感じた私は、 迷わず当時15000円を投じて買い購めた。初版本で定価12円の豪華本である。
著者の長谷川傳次郎(1894~1976)は東京伝馬町の老舗箪笥店に生れたが、関東大震災で焼出されて 北海道へ。1925年に古美術研究のためインドへ渡り、詩人タゴールのビスワバラライ大学に入学、同じ大学 出身のコサジ―と共に、ヒマラヤ旅行に出て、カイラス,カシミール,ナンガパルバットを巡った。
この本は、ヒマラヤの写真を日本人で初めて紹介した点でも画期的であり、当時、若者のヒマラヤ熱を大いに煽ることになったと謂われている。
後年は写真家として、国から依頼されて国宝仏像の写真を手掛けた。昭和51年没、享年81歳。
私にとって、長谷川傳次郎は田淵行男、深田久弥などと共に、山への憧れを、そして後年ヒマラヤへの夢を 大きく膨らませてくれた恩人である。