2012年 06月 11日
西蔵カイラス行(1)
西蔵カイラス行(1) 漢詩紀行(9)
今から16年前、チベット高原の西の果てに聳える、聖山[カイラス]・チベット名は「カン・リンボチェ」
6656mを目指した時の旅の思い出である。
初めて仰ぐ聖なる「カン・リンボチェ」は、チベット高原にすっくと独り、そそり立っていた。
夢中で何枚も何枚も筆を走らせた。氷の壁に縦に走る大きな亀裂は神の啓示かと・・・・・・・。
永年の夢であったカイラス行は、1996年の5月22日に大阪を立ち、25日間の永い旅だった。
ネパールのカトマンズからヒマラヤを縦断してチベットへ入り、26日から車で5000mの峠を
幾つも越えて、北西へ北西へと走り続けて1週間余、ようやくカイラスが見えたのが6月2日のことである。
ランドクルザー5台に、テント・ガソリンなどを積んだトラックが2台で、毎日150~200キロを走る。
借り物の地図だが、カイラスへの行程の長いことは判って頂けるかと。
西蔵カイラス行
西蔵 曠原 途渺茫 西蔵 曠原 途渺茫たり
馳車 旬日 遂頽陽 車を馳せて 旬日 頽陽を遂ひ
遥天 拝望 聖山頂 遥天 拝望 聖山の頂
清浄 六根 羈思長 清浄 六根 羈思長し
チベットの 西の果てしに 在ると聞く
聖なる山を 訪ねんと 広大無辺の 荒野をば
路なき路を ひた走り 橋なき河を また渡り
沈む夕陽を 追い続く 日々を重ねて ようやくに
遥かに望む 聖山は 地平に白く 独り立つ
六根すべて 清らけく 思いをこめし 旅の空
夢まぼろしの 山そこに
5月29日、ネーラムトン・ラより、ヒマラヤのシシャパンマ(希夏邦馬)峰8027mを望む。
ヒマラヤ8000m峰14座の一つで、別名ゴサインタンの名でも知られる名峰。 1964年に中国隊に
よって初登頂がなされた。 ネーラムトン・ラのラは峠のことで、峠の標高は5180m。
これまでネパール側から見ていたヒマラヤ山脈の名峰を裏から見ることになる。 平均4000mの
チベット高原から見るヒマラヤは思いなしか、少し穏やかに見えた。
果てしないチベット高原は、砂漠・草原・岩山と表情を変えながら何処までも続く。そして草原の彼方には、
放牧の白い羊の群れ、黒い大きなヤク(チベット牛)の群れが・・・・・・。