2010年 06月 09日
赤色三番叟 能面雑話(6)
赤色三番叟?
この面は縦に大きく割れて、ひもで繋いであり、顎も大きく欠けている。彩色も
ボロボロなのだが、その細く小さな眼が優しい微笑みを浮かべて何とも言えない
雰囲気を漂わせている。私のところに来たのはずいぶん以前のことだが、ご多分
にもれず由来は不明である。
不思議な面だなぁ~と思いながらも、忘れかけていた頃、中西通著「能のおもて」
が出版(1998年)された。 その表紙カバーの写真を見て、不勉強な私は初めて
三番叟に「黒色三番叟」 と 「赤色三番叟」の2種類があることを知った。
私のこの面が、その 「赤色三番叟」に当るものかどうかは、判らないが「式三番」
の「千歳」「翁」に続く「三番叟」が「黒色尉」だけでなく昔は赤色のものがあったことは
確かで、若しかすると「白色三番叟」と言うのもあったかもしれない。
いずれにせよ、私にとって、この新鮮な驚きは、この面のお陰だと思っている。
「能面彩色手控巻」 中西通著「能のおもて」より
「黒色三番叟」 と 「赤色三番叟」
これは、篠山能楽資料館館長・中西通著「能のおもて」の表紙カバーの写真から
転載したもので、青い線と線の間が巻物の巾で一面ずつ横に並んでいる。
本物は現在、資料館に展示中。一見に値する資料である。
巻頭に「能面彩色手控巻」と書かれた巻物で、長さ622糎、巾26糎、面全体はほぼ
原寸に近く描かれている。現在のスケッチとは異なり、各面の特徴、骨格をよく捉えた
画法で、安政三年(1856)に写されたものである。<中西通著「能のおもて」より>
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