2010年 05月 08日
能面と面袋 能面雑話(3)
能面と面袋
この能面は「十六」、わずか16歳の若さで、須磨の浦の露と消えた敦盛に因んで
つけられたと言う面です。
「青葉の笛」
一の谷のいくさ敗れ
討たれし平家の 公達あわれ
あかつき寒き 須磨の嵐に
聞こえしはこれか 青葉の笛
明治以来ずっと、小学校の唱歌の教科書に載っていたもので、私たちの年代には、
懐かしい歌です。
後年能面を打つようになり、能の曲目も併せて勉強するようになると、この歌のもつ
味わいを更に深く感じられるようになりました。
明日は死ぬときまった夜に悠々と管弦に遊ぶ平家の陣、その「滅びゆく者の美」を、
世阿弥は、敦盛に「中の舞」を舞わせることで「修羅もの」でありながら異例とも言える
幽玄の情趣をもつ能「敦盛」を作出したのです。
戦場でも錦の袋に入れた笛(銘小枝)を、いつも腰にさしていたと言う、
若き公達「敦盛の面」を納めるのに相応しい面袋として、私は、今回
平家の紋「あげはの蝶」を配したものを選びました。
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